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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2018/12/20 その186 品質保証と身分制組織

今時、身分制組織とは?と訝る方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら実質的な身分制組織は残っています。少し前のことになりますが、某大手基幹産業のトップの方との対話で次のようなことがありました。

某トップ:『先日、現場の人たちと話す機会があってとても良かった』
  私 :『どのような話をされたのですか?』
某トップ:『現場に行って従業員の代表者たちとビールを飲みながら話ができた』
  私 :『それは良かったでしたね』
某トップ:『事業所に依頼して20名ぐらいの人たちと事務所内の会議室でいろいろ話が聞けました』

詳細の会話は省きますが、要するに3交代1,000人以上の事業所で代表者20名と工場入り口近くの事務所で会合を持ったものの、本当の現場には行っていないし、ランダムな人選ではなく会社側でお膳立てした人と話をしたということでした。それでも、これまでは経営トップが現場の事業所に行ったり直接話をすることはなかったので画期的な出来事と言えるのです。

さて、このような組織では都合の悪い品質上の課題が報告されることはないでしょう。報告がなかったというのは釈明会見等でよく聞かれる言葉ですが、情報は待っていても上がってきません。取りに行かなくてはならないのです。
品質管理は地味で根気のいる仕事ですが、異常値の発見は比較的容易にできます。問題はその後の対処にあります。直接上司が適正な判断をしていれば情報は伝達されるのですが、時として報告ルートの上位者が顧客の真の要望と使用状況を把握しないまま適否の判断をして組織内の波風を消してしまうことがあります。

上の例に挙げたような風通しの組織では課題は膨大な情報の中に埋没し、表面化しない可能性が高くなりますが、上司が情報を取りに来るような組織では課題を埋没させるのは困難で、必然的に早めに上位責任者に情報が伝わり適切に処理されるのです。

残念ながらこのような体質の会社がまだ多いと言わざるを得ません。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

田原中男氏の尖った提案 バックナンバー

2018.12.20 その185 東大卒が日本をダメにする?
2018.12.11 その184 三題噺 英米法とお上と忖度
2018.11.29 その183 徴用工の亡霊か?
2018.11.15 その182 積極性の楽しさ
2018.11.15 その181 JRの計画運休
2018.11.09 その180 試合中の事故で賠償?
2018.11.08 その179 私の憲法改正
2018.11.06 その178 虫眼鏡社会
2018.10.23 その177 一億総無責任時代
2018.10.05 その176 再び寛容と忍耐を
2018.10.05 その175 労働法の改正で自由な働き方を
2018.09.27 その174 国際感覚を磨こう
2018.09.19 その173 役職定年って何だろう
2018.09.14 その172 外見が変わると中身も変わる
2018.09.05 その171 そして誰もいなくなった
2018.08.31 その170 大学無償化前に必要なこと
2018.08.10 その169 プロの活用
2018.08.10 その168 やはり日本には投資家はいなかった
2018.08.10 その167 茹でガエルになっていないか?
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2018.07.18 その165 ピンボケの働き方改革
2018.07.10 その164 なぜ、閉塞感なのか
2018.07.06 その163 不作為の作為
2018.06.29 その162 日中露とかけて今を楽しむと解く
2018.06.22 その161 アベノミクスを検証する
2018.06.12 その160 農業国アメリカ
2018.06.05 その159 北朝鮮に1ポイント
2018.06.04 その158 融資から投資へ
2018.5.30 その157 翻訳と文化
2018.5.22 その156 ロボコンの功罪
2018.5.15 その155 北朝鮮問題を考える
2018.5.8 その154 団塊の世代と大学闘争
2018.4.23 その153 MBA経営が会社をダメにする?
2018.4.17 その152 Pentagon Papers
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2018.4.2 その150 発言の取り消しとは何だろう
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2018.2.13 その143 Space-Xのロケットは23階建てのビルと同じ
2018.2.5 その142 政治とマーケティング
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2017.12.25 その137 日本本社の設立はできるか
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2017.10.16 その127 部長が多すぎる
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2017.10.03 その125 働き方改革 その5
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2017.09.04 その121 優柔不断と時期尚早
2017.08.28 その120 サムライジャパンのユニフォーム
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2017.08.14 その118 中島春雄さん
2017.08.07 その117 8月6日、9日、15日 そして7月31日
2017.07.31 その116 働き方改革は働かせ方改革
2017.07.24 その115 目的と手段
2017.07.19 その114 出遅れる日本企業
2017.07.04 その113 私の参議院・選挙改革
2017.06.27 その112 日本的経営の終焉とこれから:その4
2017.06.19 その111 日本的経営の終焉とこれから:その3
2017.06.14 その110 日本的経営の終焉とこれからの時代:その2
2017.06.05 その109 日本的経営の終焉とこれからの時代:その1
2017.05.28 その108 勝ち馬に乗る
2017.05.21 その107 ガバナンス、民主主義、多数決
2017.05.17 その106 何故、コンサルは役に立たないのか?
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2017.05.01 その104 決算発表は何故遅れる?
2017.04.23 その103 新しい産業をどうやって起こすか?
2017.04.16 その102 日本式経営、絶頂の30年、惰性の30年、そして衰退の30年
2017.04.09 その101 ワグナーの曲は美しいか?
2017.04.02 その100 日本人とは
2017.03.27 その99 本質を見抜く力を養おう
2017.03.19 その98 企業の寿命は?
2017.03.12 その97 公人、私人?
2017.03.05 その96 国家百年の計
2017.02.27 その95 プレ金?
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