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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/4/16 その102 日本式経営、絶頂の30年、惰性の30年、そして衰退の30年

いわゆる『日本式経営』は、昔からあるように思う人が増えてきましたが、実際には戦後の産物です。

終戦直後の状況を見ますと何もない状態でまさに白紙に絵を描くように、自由に制度設計ができたという幸運があります。生産設備は崩壊、老練経営者はおらず若手が活躍できたことと幸運にもエネルギーがそれなりに確保できたということがあります。

水力発電と石炭があり、ある程度のエネルギー源が確保できていたということは時代は違いますがイラク戦争後のイラクと比較してみると歴然とした違いがあります。

このような基盤の上に、朝鮮戦争特需ということが加わり高度成長を遂げてきました。高度成長が新卒一括採用、社内人材育成、年功型人事制度、ボーナスと残業による景気循環対応を可能にしてきたのですが、この成功体験があたかも『日本式経営』の成功物語となってしまったのです。

それから30年、石油ショックが起き成長率は7-10%から3%程度に低下しましたが、それまでの余勢でなんとか成長を維持し、『日本式経営』も継続してきました。

さらに30年経過し2000年代になり大きな節目を三つ超えたところで過去のビジネスモデルに破綻がきました。バブルの崩壊、ITバブル、そしてリーマンショックです。

もはや『日本式経営』の前提はなくなり新しいモデルが必要とされているにも関わらず、相変わらず原点復帰のような議論が続いていることが現在の閉塞感からの脱却を遅らせています。

最初にも書いた通り、終戦直後の『日本式経営』が成功した前提条件は大きく変化してしまっていますので、新しい発想で組織、経営、処遇制度を見直す必要があります。

ここでキーポイントとなるのは『仕事の成果をどうやって評価するか』ということで、そのためには『具体的な仕事の目標の設定』が必要で、これまでのように人物評価や将来への期待のみでなく、『目標』『達成』『評価』という客観的な物差しを各企業や組織がそれぞれに明示する必要があります。

まさに知恵の勝負ではないかと思います。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

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