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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/1/22 その90 働き方改革

働き方改革、大いに賛成。 しかし非正規社員の問題にせよ残業規制にしても対症療法で本質を突いていません。根っこにある問題は生産性の向上とどのようにして結びついているかという観点が抜けていることです。本来的に経済界が自ら行うべきことであるにもかかわらず政府主導でしか進まないこと自体に危機感を覚えます。

残業がなくならないのは『上司がいるから帰れない』という慣行があるからです。経営者がこれら上司の評価を変えれば解決します。

もう一つ、労働契約の問題があります。契約といいながら会社と個人が契約交渉する場はありませんので、隷属的な契約になっています。これを正社員という身分によって定年までの雇用、ボーナスの支給、などでカモフラージュしています。つまり、この隷属的な労働契約を変更しない限り非正規社員の問題も解決しません。定年制度は年齢による差別であるとともに実質的な有期雇用を終身雇用と偽っているのです。

問題の本質は次の三つ

1.ベアの基礎は何か

2.定年の廃止

3.ボーナスの縮小

高度成長期には一定のインフレ、合理化による労働生産性上昇と産業構造の転換若年労働力不足が絡み合ってベースアップをする原資が確保できましたが、低成長になると生産労働人口の年齢上昇もあり個人の労働生産性が上昇しない限りベースアップの原資確保は難しくなりました。

現在は就労人口に占める第3次産業の比率が高いので、この分野での生産性向上が必須なので、平均的にできる社員よりもプロフェッショナルな社員が求められます。労働者は自らの実力を高めるような不断の努力と技術習得が必要です。

新卒採用でローテーションしながらゼネラリストとして人材育成する社会からプロフェッショナルとして高い専門性を維持する社会になるのですが、経営者も一つのプロフェッショナルとして認識し、必ずしも双六的な上がりのポジションという考えからからの脱却が必要です。

このように考えると、先に挙げた三つが障害になります。

ベアよりも専門性と生産性向上に対する評価による昇給

専門家であれば定年を設ける必要はない一方、定年前に仕事がなくなることもある

ボーナスは利益配分であれば固定分を廃し給与として毎月支給し、個人の生産性向上に応じボーナスを支給する

共通していることは評価方法の変革ですし、実力による評価が定着すれば女性の活用も高齢者の雇用も外国人の雇用もまったく問題ありません

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

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