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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/2/20 その94 労働生産性を上げるには

余剰人員を減らすこと

“冗談じゃない、今は人手不足だ” と言われそうですが、敢えて主張してみます

実質的にはほとんどの会社、特に大会社では実質的な余剰人員を抱えていています。人員過剰にもかかわらず、大会社は新卒採用で優秀な(?)人材を囲い込み、元気な中小企業には人材が回ってこないという状況を正しく認識することが必要です。

なぜこのようになるかといえば、原因は複雑多岐に亘りますが一口に言って
『人員削減は悪』と『定年前に辞めるのは恥ずかしい』という無言の圧力にあると考えられます。

最近は早期退職も多くなり、後者の意識は薄れているのかもしれませんが、それでも社内のトップクラスは辞めないという常識は生きています。海外では、逆に『人員削減をしないのは力量のない経営者』『異動しない人は力がないから』とみなされています。

このような意識は簡単に変わるものではありませんので、まず実需を作り上げることこそ肝心です。実需とは新しい産業、新しい会社、今までにないニーズを捉えた新規需要等の創設です。

戦後日本の成長を支えてきた規律正しい労働力による製造業を中心とした経済から知識産業やこれからも需要が増加する介護を始めとするサービス業を中心とした経済への転換です。そのためには『働き方改革』を始めとする労働契約の柔軟性、多様性を発揮できるような法整備、海外からの優秀な人材の受け入れが可能になる法整備や生活環境の改善が必要ですし、もっと英語でコミュニケーションができる人材の育成も重要です

生活環境の整備はインフラ投資
コミュニケーション能力は教育投資
そして必要な時に必要な技術を身につけて転職できるような職業訓練とその間の収入補償

このような分野に予算は適確に配分されているのでしょうか
企業はこのような変革のために従業員教育や補助を行なっているのでしょうか

最近の新聞で吉野家が柔軟な正規社員登用を推進しているという記事がありましたこのような小さな変革がやがて多いなうねりとなり、ついには津波のようになって構造変革が起きることを期待します

新しい産業が起き、人材需要が高まれば自然と労働力の移動が始まり、リストラや早期退職制度を使わなくても優秀な人材から転職しますので、企業は逆に人材確保の施策を採る必要に迫られ、労働条件は改善され賃金上昇や時短が進むでしょう。ポジティブサイクルに入って初めてデフレが解消されます。

結果として労働生産性は高まっているはずです

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

田原中男氏の尖った提案 バックナンバー

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BMDリサーチ http://www.bmd-r.com