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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/1/16 その89 農産物の規格化

昔ながらの八百屋さんではなんでも好きな数だけ選んで買うことができましたが、スーパーでは野菜や果物まで袋詰めされ、しかも中身はどれも同じ大きさで、あたかも工業製品のように売っています。 消費者もそれに慣れてしまって野菜も同じ大きさ、重さのものが当然と思うようになり、時々“大きさ不揃い”のパックが安売りされています。

考えてみると畑では様々な大きさのものができる訳で、規格外の商品は出荷されないで農協の売店等で安く売られるか、場合によっては廃棄処分になっているのかもしれません。 当然その分値段が高くなっています。

昔アメリカで暮らしていた時には、スーパーの野菜、果物は全て量り売りになっていて、各自形やお大きさを見ながら好きなだけ袋に詰めて備え付けの計量器で重さを測ると値段が印刷されたラベルが出てきて、それを貼ってレジへ向かうというようになっていましたので一個でも買えましたが、日本では袋に入った数量を買わざるをえません。

流通の効率化のため規格化された箱には一定の数量が入るようになっていて、規格外のものは流通ルートに乗らず歩留まりは低くなります。生産者は歩留まりを上げるために手間をかけるので当然のことながらコストは高くなります。

ある種の回遊魚は集団で行動し、餌を取るためその集団の魚の大きさはほとんど同じになります。集団で種の保存を図りますので餌を食べるため集団の中側の魚が外へ出て餌を食べ、食べ終わると集団の中に入り餌を食べる順番を譲るという行動を繰り返しているので、結果的にその集団の中では餌を食べる量が一定になることが原因です。しかし自由に動けない畑の作物はそうはできないので自然と大小や色付きに差が出ます。

それを“選別”という形で形や重さをを揃えてしまう必要があるのでしょうか。

自然のものは自然のままでという方が理にかなっているように思えます。

自分の目を養い、工夫して生活コストを引き下げるのは先人の知恵で、町の八百屋さんや魚屋さんは閉店近くなると売れ残りを値引きして処分しますので、顧客も夕方近くに買い物に来ます。少し遅れると物がないのでそれぞれの感を働かせる必要もあり、また客が集中することで活気もできます。

小さな努力と才覚が必要で、これに磨きをかけることで他の分野でも活躍できるようになります。

『自己責任』が養われ、様々なことに対する感覚を研ぎ澄ますことになります。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

田原中男氏の尖った提案 バックナンバー

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BMDリサーチ http://www.bmd-r.com