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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/5/1 その104 決算発表は何故遅れる?

決算発表の延期、業績見込みの大幅な改訂が相次いで伝えられています。決算発表が遅れるのは最悪の事態だとしても、突然起きるわけではなく、必ず前兆があり直前での業績見通しの改訂はその一つと考えらえます。

決算直前になって大幅な業績修正をするのは、決算数字に合わせようとするのでしょうが、ここに二つの疑問があります。

一つは何故、直前なのかということです。業績見込みはあくまでも見込みなので実際の数字と異なることはありますが、極力差が無いようにしたいということで確実性を期すればするほど発表時期が遅れてしまい、見込みの意味が小さくなってしまうという矛盾を含んでいます。

二つ目の疑問は、何故見込み違いができてしまうのかということです。第一四半期ならいざ知らず、第三四半期となれば年間実績の四分の三になるわけでこの時点で年間見込みが立たないということは内部管理体制に不備があるのでは無いかという疑いを持ちます。

多くの企業で四半期毎の累積が当初計画から乖離していても年間の業績数字を変更しないことが多く、結果的に第三四半期あるいは最終業績発表時修正を加えるために大きな乖離が出てしまうということがあるようです。

もともと、業績見通しは株主やその他のステークホルダーに対する情報開示ですから業績の推移によっては年間計画そのものをその都度修正するべきだと考えます。

古い話ですが、2002年4月のソニーの大幅な営業利益の減少(3000億円から2000億円への修正)は、「ソニーショック」として株式市場全体が大きく下げることになりました。
この時の原因は、いわゆる「合成の誤謬」と「現場と乖離した管理部門」にありました。

本当に直前まで経営陣もわからなかったとしたら内部管理体制に大きな問題があることになりますし、社内では認識しているものの対外発表をしないということであれば、市場との会話ができていない、市場の信頼を得るような行動をしていないことになります。

企業の内部管理体制とは表面的な体制構築と内部監査を実施することではなく、実質的に市場やステークホルダーに対してどれだけ真摯に対応しているのかが問われていると考えます。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

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