• TOP
  • ≫ メッセージ

会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/5/21 その107 ガバナンス、民主主義、多数決

三題噺のようになりますが、少し詳しく内容を分析してみましょう。

組織内で物事を決定する場合、特に重要な案件であればあるほど賛否が僅少になり、52:48程度になるのが通常で、55:45となれば圧倒的な賛成という雰囲気になります。特に日本の会社のように会長がほとんどの人事権を持つような組織ではトップの意向が強く反映され勝ちですから、社外取締役や監査役の存在はますます重要になります。

翻って政治の世界を見てみましょう。

日本の場合、党議拘束が強くほとんどの案件で法案提出前の党内議論段階から拘束がかかる事が珍しくなく、議論が深まらない一因となっています。前にも述べたようにほとんどの案件は52:48という賛否だとすると少数意見はどこに行ってしまったのでしょうか。

民主主義のルールでは多数決が無制限な議論に終止符を打ち、課題解決のために迅速な行動を取る手段として認められています。一つ指摘したいのは多数決は必ずしも単純多数決ばかりではありません。米国上院では60票ルールがあり、重要案件は51でなく60が必要ですし党議拘束はほとんどなく、各議員の意見が投票行動に深く関わります。

英国でも党議拘束する場合もありますが、多くの議案が議員の裁量に委ねられます。各議員は選挙区住民の意向を反映させないと再選されないので、選挙民の意見をよく聴くようになります。

残念ながら、日本の場合はこのような選挙民の声を汲みあげる仕組みが希薄で議員は投票マシーンのようになって存在感が薄くなっています。

例えば、参議院では党議拘束を禁止し、各議員が自らの判断で投票するようになると参議院の存在価値も出てくるのではないでしょうか。

会社でも国でも組織運営のルールによって構成員の意見集約の仕方が異なってきますのでガバナンスルールはとても大切な事なのですが、どこまで議論が深まっているのでしょうか。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

田原中男氏の尖った提案 バックナンバー

バックナンバーは下記URLよりご覧下さい。
BMDリサーチ http://www.bmd-r.com