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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2017/11/13 その131 経済学の当てはまらない時代

ベトナム戦争直後に世界的な不景気から回復できない時期に石油ショックによる大幅なインンフレーションが発生し、スタグフレーションという言葉ができました。

経済学では景気が悪いと需給均衡点が下がるので物価は下がり、再び需要が回復するので景気が回復すると教えられますが、スタグフレーションの時代には物価は上昇し続け、その結果景気はますます落ち込むということがありました。

最近のように景気が良くても物価が上がらない状態はちょうどその反対にあります。

貿易の自由化と新興国での生産拡大、世界的規模での最適地生産が行われ、また品質管理技術と生産技術の向上で世界中どこで生産しても一定の品質が保持されるようになり、『Maid in OOOO』という価値が下がることにより相対的に物価水準の低い国の製品が次々と供給されることで先進国での物価は低下したままです。

このような状況では一国の産業政策や中央銀行による金融政策の有効性は大幅に制限されます。

◎アメリカは大きなGDPと自国通貨が基準決済通貨であることでドルを印刷することで比較的自由な政策が可能です。
◎ヨーロッパ諸国はEUとユーロで広範な地域での共通経済政策で一定の政策の有効性を維持しています。
◎中国は巨大な市場を内包し、しかも大きな需要があるので高い成長率を維持することが可能です。

さて、日本はどうでしょうか。

輸出を基本としたこれまでのあり方は、アジア諸国の追い上げで価格競争力が低下していますし、今後とも価格競争で勝ち抜くことは難しい状況です。

国内では人口の高齢化、絶対人口の減少に直面し国内市場のみでは市場規模が小さく国内生産の競争力は低下していますので、海外での生産や企業活動で利益を得る構造になり、国内の雇用を維持することが困難になってきています。

これからは価格競争ではない競争力を維持できるような新しい産業、新しい市場創造が求められるのですが、経済政策も、産業構造も、教育体系もこのような要求に答えられるようにはなっていません。

単にインフレ2%を目標にしていてはますます厳しい時代が来てしまいます。スタグフレーションの時代に経済理論での解決策がなかった時と同様に、新しい発想で困難を乗り切ることが必要です。

21世紀に入る前にハドソン研究所がアメリカ政府の要求でまとめた『Workforce 2000』は日本にとっても大変参考になる政策提言です。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

田原中男氏の尖った提案 バックナンバー

2017.11.05 その130 日産、スバルの完成検査
2017.10.29 その129 映画 ドリーム
2017.10.23 その128 日本沈没
2017.10.16 その127 部長が多すぎる
2017.10.10 その126 日本のバーニー・サンダース出でよ
2017.10.03 その125 働き方改革 その5
2017.09.25 その124 規制、補助金、入札
2017.09.19 その123 カッシーニ土星へ突入
2017.09.11 その122 中小企業の力
2017.09.04 その121 優柔不断と時期尚早
2017.08.28 その120 サムライジャパンのユニフォーム
2017.08.21 その119 国民皆保険
2017.08.14 その118 中島春雄さん
2017.08.07 その117 8月6日、9日、15日 そして7月31日
2017.07.31 その116 働き方改革は働かせ方改革
2017.07.24 その115 目的と手段
2017.07.19 その114 出遅れる日本企業
2017.07.04 その113 私の参議院・選挙改革
2017.06.27 その112 日本的経営の終焉とこれから:その4
2017.06.19 その111 日本的経営の終焉とこれから:その3
2017.06.14 その110 日本的経営の終焉とこれからの時代:その2
2017.06.05 その109 日本的経営の終焉とこれからの時代:その1
2017.05.28 その108 勝ち馬に乗る
2017.05.21 その107 ガバナンス、民主主義、多数決
2017.05.17 その106 何故、コンサルは役に立たないのか?
2017.05.08 その105 働き方改革 その3
2017.05.01 その104 決算発表は何故遅れる?
2017.04.23 その103 新しい産業をどうやって起こすか?
2017.04.16 その102 日本式経営、絶頂の30年、惰性の30年、そして衰退の30年
2017.04.09 その101 ワグナーの曲は美しいか?
2017.04.02 その100 日本人とは
2017.03.27 その99 本質を見抜く力を養おう
2017.03.19 その98 企業の寿命は?
2017.03.12 その97 公人、私人?
2017.03.05 その96 国家百年の計
2017.02.27 その95 プレ金?
2017.02.20 その94 労働生産性を上げるには
2017.02.12 その93 同一労働・同一賃金2
2017.02.06 その92 働き方改革3
2017.01.29 その91 働き方改革2
2017.01.22 その90 働き方改革
2017.01.09 その88 時期尚早
2017.01.04 その87 あけましておめでとうございます
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BMDリサーチ http://www.bmd-r.com