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会計実務家コラム

会計ダイバーシティでは、会計領域でご活躍されている実務家の方々のコラム記事などをご紹介してまいります。
業界の動向や時事問題などをテーマにした独自の視点・見解の内容となっておりますので、新たな発見の一助になれば幸いです。

田原中男氏の尖った提案

2018/5/8 その154 団塊の世代と大学闘争

大学紛争ではなく敢えて『大学闘争』としたのは本質を逃さないためです。
1968年の大学闘争は東大医学部の『処分撤回運動』が発端です。ある事件によって学生が処分されましたが、事実認定に誤りがあり大学側もその誤りを認めたのですが、処分は撤回されませんでした。

これに対して処分撤回を求めたことから大きな運動になり、結局教授会の権威に対する不信感、学問の進歩に対する疑問へと広がっていったのです。
新しい学説を基にしてスポンサーからの援助を得て新しい講座が開ける欧米と異なり日本では確定した講座をめぐるポスト争いなので、学説の独自性や優位性よりも先任教授に対する従順性が優先され、学問の進歩が妨げられることもあります。

またそのことにより教授の権限が強く、結果的に『教授のお気に入りしか次の教授になれない』という学問の進歩を否定するような制度に対する疑問が生じたのです。学問のみでなく社会全体に普遍的に当てはまる疑問で、学生全体の共感を得たため他学部にまで広がる学生運動になりました。
その後、この動きに便乗して勢力拡大を狙った社会党、共産党系の外部団体が介入し全共闘運動として『大学紛争』へと変質してしまったのです。

教授の実績を超える実績を上げた人への評価と活躍の場をどのようにして与えるかということが本質で、似たような学生運動のあったフランスではド・ゴールが本質を的確に捉えParticipationといって若干30歳台半ばの文部大臣を任命し大学の大改革を実施しました。わかりやすいところではエリート校であったソルボンヌ大学はなくなり今ではパリ第3大学と呼ばれ、バカロレアに受かった学生はフランス全土どこでも好きな大学に入れるようになったのです。

日本の場合は何の改革もないままに今に至り、アカデミックな力が落ちていることが明らかですし、ノーベル賞受賞者からも今後日本からノーベル賞を受賞できる成果は期待できないという声が上がっています。


半世紀も前の決断が今現実の結果となって現れています。

為政者に限らず、経営者も学者も構想力が問われています。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

田原中男氏の尖った提案 バックナンバー

2018.5.8 その153 MBA経営が会社をダメにする?
2018.4.17 その152 Pentagon Papers
2018.4.13 その151 働き方改革 その8 仕事量の削減が秘密の鍵
2018.4.2 その150 発言の取り消しとは何だろう
2018.3.26 その149 百年の計を見通した今の課題
2018.3.19 その148 プロの活用
2018.3.11 その147 女性の社会的進出
2018.3.5 その146 今、何が必要なのか
2018.2.26 その145 働き方改革 その7 裁量労働制の議論が横道に
2018.2.19 その144 働き方改革 その6 身近なことから改革しよう
2018.2.13 その143 Space-Xのロケットは23階建てのビルと同じ
2018.2.5 その142 政治とマーケティング
2018.1.29 その141 会議とコーヒーブレーク
2018.1.22 その140 幼稚園に見る最近の世相
2018.1.15 その139 やはり生産性の向上がこれからの鍵
2018.1.9 その138 正月早々ですが、頑張れの意味を込めて〝ひ弱な日本〟に喝!
2017.12.25 その137 日本本社の設立はできるか
2017.12.18 その136 再び身分制度を考える
2017.12.11 その135 NHK受信料
2017.12.4 その134 もっと楽観的になろう
2017.11.27 その133 仕事に必要な六つの資質
2017.11.21 その132 プロのコーチの存在感
2017.11.13 その131 経済学の当てはまらない時代
2017.11.05 その130 日産、スバルの完成検査
2017.10.29 その129 映画 ドリーム
2017.10.23 その128 日本沈没
2017.10.16 その127 部長が多すぎる
2017.10.10 その126 日本のバーニー・サンダース出でよ
2017.10.03 その125 働き方改革 その5
2017.09.25 その124 規制、補助金、入札
2017.09.19 その123 カッシーニ土星へ突入
2017.09.11 その122 中小企業の力
2017.09.04 その121 優柔不断と時期尚早
2017.08.28 その120 サムライジャパンのユニフォーム
2017.08.21 その119 国民皆保険
2017.08.14 その118 中島春雄さん
2017.08.07 その117 8月6日、9日、15日 そして7月31日
2017.07.31 その116 働き方改革は働かせ方改革
2017.07.24 その115 目的と手段
2017.07.19 その114 出遅れる日本企業
2017.07.04 その113 私の参議院・選挙改革
2017.06.27 その112 日本的経営の終焉とこれから:その4
2017.06.19 その111 日本的経営の終焉とこれから:その3
2017.06.14 その110 日本的経営の終焉とこれからの時代:その2
2017.06.05 その109 日本的経営の終焉とこれからの時代:その1
2017.05.28 その108 勝ち馬に乗る
2017.05.21 その107 ガバナンス、民主主義、多数決
2017.05.17 その106 何故、コンサルは役に立たないのか?
2017.05.08 その105 働き方改革 その3
2017.05.01 その104 決算発表は何故遅れる?
2017.04.23 その103 新しい産業をどうやって起こすか?
2017.04.16 その102 日本式経営、絶頂の30年、惰性の30年、そして衰退の30年
2017.04.09 その101 ワグナーの曲は美しいか?
2017.04.02 その100 日本人とは
2017.03.27 その99 本質を見抜く力を養おう
2017.03.19 その98 企業の寿命は?
2017.03.12 その97 公人、私人?
2017.03.05 その96 国家百年の計
2017.02.27 その95 プレ金?
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