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【海外トレンド発信】クラウド化が会計業界にとって切実な理由

2018年8月13日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

正に唖然とした。クライアントの親会社である日本本社のサーバがランサムウェアに侵され、先週完全に停止してしまったのだ。サーバは社外のデータセンターにあり、もちろんバックアップサーバも備えてあったが、時間差でどちらも停止してしまうという事態に陥った。メールシステムはGoogleのG Suiteを使っていたので生きいたが、それ以外の会計データを含む社内のほとんどのデータがサーバ内にあり、データ入力どころか見る事さえできない状態となってしまった。“ランサムウェア”とはデータを暗号化して使えない状態にしてしまい『復元して欲しければ身代金を払え』という種類のサイバーテロだ。





発信元は中東かヨーロッパかアフリカ

後に判明した事だが、このランサムウエアの発信元(身代金要求元)はこれらの地域の海外の相手であろう事が判明した。もちろんサーバ上に表示された脅迫文は英語で、後のコミュニケーションも英語でのものとなる。こんな地域から日本の会社、しかも社員の端末ではなくデータセンターのサーバに入り込んだのが驚きだった。
十分なセキュリティーとはどのレベルか?

ランサムウエアに侵されてしまったその日本企業は、決してITシステムに弱い会社ではなくセキュリティーも合理的な範囲で十分整えていたはずだと思われる。それでもどんどん新たなランサムウエアが出てきて高度化するサイバーテロの前には為す術が無かった。こんな時代になってくると、例えば自分がIT部門も含むCFOだったとしたら、果たして“十分なセキュリティー”など責任を持って整える事ができるだろうか?情報セキュリティー会社が勧めてくるツールをかなりの費用をかけて一通り入れたところで、それで安心と言えるのだろうか?
クラウドへのバックアップは安心か?

私のクライアントである米国子会社の方は、社内に自社サーバを持ちながらも、毎日夜中にIntuit社のクラウドにバックアップを取る仕組みにしてある。大手企業のクラウドサービスであれば世界最高峰のセキュリティーを随時追い求めている(と思われる)ので、自社サーバのセキュリティに比べればかなり安心だ。しかし、会計システムによくありがちなのが『バックアップをリビルドしてみたらデータが少し壊れた』などという症状だ。もっと酷い場合には何らかのエラーでリビルドできないなどという事もなくはない。そうなるといくらバックアップがあったとしても『それで安心』とはなかなか言えない。
クラウドベースのシステムが唯一の解決策?

そう考えていくとクラウドへのバックアップではなく、クラウドベースのシステムを最初から使っている方が遥かに安心に思える。バックアップを取る必要もリビルドする必要もない。クラウドベースのシステムはまだまだサーバベースのシステム程の機能性を持たないものが多いが、それでもサードパーティーのクラウドベースアプリと組み合わせるなどすれば機能を足していくとこも可能だ。セキュリティーはそのクラウドシステムの会社に依存する事にはなるが、自社で対策するよりは大手クラウドに依存する方が遥かに安全なように思う。会計業界ではまだまだ普及しきっていないクラウドだが、その重要さを痛感する今回の事件であった。

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