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【海外トレンド発信】アメリカでは地銀が今も強い理由

2020年11月13日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

以前アメリカの大手銀行の最近の動向を書いたが、今回は地方銀行について触れてみたい。アメリカには(日本ほどではないものの)エリア毎に有力地方銀行があり、地元のビジネスや個人に深く入り込んだサービスを行っている。実のところ私は今まで大手銀行との取引しかしてこなかった。クライアントの多くは多国籍企業なので、大手銀行でないと対応が難しいと思っていたからだ。しかし、今回シカゴにある有力地方銀行でクライアントの口座を開設する機会があり、地方銀行の有用性を強く認識するに至った。
大手銀行の便利さと不便さ
アメリカの大手銀行はとにかくシステム化や効率化を力強く進めている。より多くの手続きや取引がオンラインで完結できるようになり、サポートもチャットで24時間対応してくれる。店舗に行く必要は殆どなくスマホで全てが完結。とても便利だ。しかし一方で無くなってしまった事もある。人と人との繋がりだ。古臭いかもしれないが、ユーザー側からするとこれが結構大きい。例えば、メインバンクの支店長や営業担当者がコロコロ変わる。もはや殆ど会わないので誰でも良いからそうなっているのだと思うが、ユーザー側からすると何か起こった時に一からビジネスの説明や過去の経緯を教えてあげないといけないのはとても煩わしい。店舗にいる行員も殆どシステムの一部というスタンスなので、ルーティンの事しかできないし答えられない。それ意外は本店の担当部署に電話したり、行内システムを叩いて答えを探すという状態だ。店舗が頼れないならと思ってオンラインでチャットサポートにアクセスすると、チャットの相手は人ではない。ロボットだ。チャットボットの精度はまだまだなので、何を聞いても埒が明かない決まりきった回答しか返ってこない。最後の手段で電話サポートに連絡すると「○○の方は1を、△△の方は2を」というような自動応答サービスを延々と進んでいき、やっと人間に辿り着いたと思ったら「その件は別の担当部署になるので・・」などという事も日常茶飯事だ。大手銀行はルーティンの事はとても便利だが、少しイレギュラーな手続きが必要になると大変な事になる。


地銀は真逆のアプローチ
地銀ももちろんシステム化は進めているようだが、重視しているのは地元の顧客との繋がりのようだ。以前から知り合いだったある地銀の支店長に口座開設の相談をしたところ、その支店長と部下が担当者となってくれて、以降のやりとりはどんな件でもその担当者が窓口になってくれる。「サポートとチャットしてください」などという事は絶対に言わない。また、ルールやレギュレーションをそのまま無機質に適用するのではなく、ビジネスの内容や株主の詳細まで理解し、リスクが低いと判断すれば融通を効かせてくれる。多国籍企業であればアンチマネーロンダリングやアンチテロリズム関連の条件を満たすために多くの手続きや制限が出てきたりするが、銀行担当者がビジネスをしっかり理解して怪しいビジネスではないとわかれば通り一遍にルールを適用しなくても良いというスタンスだ。これは有り難い。人を介したやりとりが多くなるためスピードが遅かったりなどという点はあるが、それを差し引いてもとても助かるし頼れる存在だ。

イギリスではもはや地銀は無く銀行と言えば大手行だけになってしまったが、アメリカでは今だに地銀の存在感が大きい。大手の“極端なシステム重視”と地銀の“人の繋がり重視”という真逆なアプローチが良いバランスで共存し、ユーザーのニーズを満たしているのかもしれない。
リモートでは父親より母親
どんなにITツールを駆使しても、リモートワークに孤独感はつきものだ。同じ職場で一緒に仕事をして「あー 今日も頑張ったね!」と言い合える幸福感を味わう事は難しい。オフィスでは仕事がうまく行かなくてもクヨクヨ考える時間はないが、リモートではいくらでもクヨクヨできてしまう。一同に会していれば、スポーツチームや軍隊のように父親的な強いリーダーがグイグイと皆を引っ張る事ができるが、皆が一人ぼっちで孤独を感じながら仕事をしている環境では、「どう?大丈夫?寒くない?」と声をかけてくれる母親的なリーダーの方が個人の不安を取り除き、ゴールへ向かう助けとなるのだろう。そう考えると、今まではリーダーっぽくないと思われていた人これからリーダーとして活躍していくようになるのかもしれない。


翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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