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【海外トレンド発信】アメリカで多発中の失業保険詐欺

2021年1月13日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

パンデミックとなり失業保険の受給者増えアメリカの雇用保険局はどこも大忙しだ。そんな大混乱につけ込んで失業保険の詐欺が横行しており、私のクライアントでも実際に被害に遭いそうになった
給与システムをハック
クライアントの社長が「誰かが俺の給与情報を取ろうとしているみたいだ」と言って来たのが2週間前。アメリカではADPという給与システムが最も普及しており、この会社でもそのシステムを使っているが、このシステムは各従業員が自分のアカウントを持ちログインすると自分で給与明細をダウンロードできたりする。どうやらこの社長のEメールアカウントを知っている誰かが、ADPにアクセスしてこのメールアドレスでログインを試みていたようだった。パスワードを変更しようとしていたらしく、その度に社長に「パスワード変更の確認」メールが何度も届いていた。仮にログインに成功したところで得られるものは名前や住所や社会保険番号、あとは社長の給与金額がわかるくらいのものだ。なぜそこまでして給与システムをハックしようとしているのか、犯人の意図が全くわからなかった。


雇用保険局からの通知
一週間後くらいに雇用保険局から通知が届いた。「御社はエリックさんを解雇しましたね。エリックさんが失業保険の申請をしましたので、もし事実でないなら申し出てください」という内容であった。同時にエリックの自宅にも通知が届き「この金額があなたの失業保険金額です。受取方法を選んでください」という内容だった。解雇された覚えもなく普通に出社していたエリックは大パニック。パニック鎮静後、両方の通知を突き合わせてみたところ、どうやら誰かがエリックの給与アカウントをハックし、エリックになりすまして失業保険の申請をしたのではないかという事がわかった。それなら氏名や住所や社会保険番号さえわかれば詐欺を働く事ができてしまう。雇用保険局に両者から連絡し、この失業保険申請がフェイクである事を伝えて事なきを得たが、もし通知を注意深く読まずファイリングなどしてしまっていたら実際に被害に遭っていたかもしれない。

企業も行政も病院もパンデミックで大混乱になっていると、そこを狙った詐欺が発生する。混乱時には『何か起こる』という前提で管理部門が注意深く対応していく必用がありそうだ。
初期スクリーニングに最適
比較的上のポジションの採用でも、最初のスクリーニングでこのツールが使われているそうだ。今まではレジュメで最初のスクリーニングが行われていたが、レジュメではその人の人となりがわかりにくい。このツールであればビデオなので紙のレジュメよりも多くの情報を得る事ができる。レジュメだけでは選考されなそうなタレントも、このツールなら取り逃さずに選考する事ができるそうだ。

今後も普及が進んで行きそうなので、いずれは一次選考のマストツールになるかもしれない。


翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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