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【海外トレンド発信】アメリカ企業救済プログラムの現状

2020年6月8日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

4月に入ってから現在まで、アメリカの銀行や会計事務所関係者はパニックに陥っている。米国政府が整備した中小企業救済のための特別ローンへの申込が殺到し、銀行や会計事務所に申し込み手続きの問い合わせが津波のように押し寄せたからだ
給与2ヶ月分を政府が提供
今回の救済策の目玉がPPPローン(Paycheck Protection Program Loan)というもので、全従業員の2ヶ月分の給与額のローンが得られるというものだ。このローンは一般の金融機関から提供されるが、受け取ったローンを実際に人件費として使った場合は返済を免除される。つまり2ヶ月分の人件費を政府が無償で提供するという内容だ。今回のパンデミックで経済的な損失を被った事を証明する必要はなく、ローン免除条件はただ『解雇をせずに人件費を払った』という事を証明するだけだ。つまり、殆どの中小企業の2ヶ月分の給与を政府が支払うという太っ腹(なはずの)プログラムだ。
スタートと同時にパンクしたメガバンク
4月初めにPPPローンの受付が開始された。まず先陣を切ったのはBank of AmericaとChaseのメガバンク2行。同日に専用ウエブサイトを開設しローンの申し込みを受け付けた。しかしながらオープンしてすぐに殆ど繋がらない状態に。しかも急造ウエブサイトであったため、サイトから受け付けた申込みデータを行員が手入力で政府のローン申請システムに入力しないといけないという状態であった。進むはずがない。3日ほど遅れて満を持してCitibankが参入。手作業なしに政府のシステムまで繋がる(はずの)ウエブサイトを開設。しかしやはり開設と同時に殆ど機能不全の状態に陥った。なんとか申し込みデータを入力できても返事が来るのは2日後。しかも追加資料をバラバラと要求してきて全くプロセスが前に進まないというパニックぶりであった。一方会計事務所にはクライアントからローン申請手続きに関する問い合わせが殺到。申し込み手続きが複雑なのでクライアントのために有料で引き受ける事務所も多かった。しかし銀行がこのような状態のためプロセスは全く進まず、イライラしたクライアントからクレームを受けるという踏んだり蹴ったりの状態となった。
一瞬で泡と消えた$350B(約37兆円)
そんな矢先に衝撃的なニュースが入った。『政府が予算組みしていた$350Bが既にローン提供されて無くなってしまった』というのだ。受付開始から1週間弱。しかも銀行でまだローンプロセスが進んでいない状況だ。殆どの企業がまだローン申し込みすら完了していないと言うのに既に予算が尽きたというのだ。会計事務所には『あなたの手続きが遅いから間に合わなかったじゃないか!』というクレームが殺到。銀行はクレームをシャットアウトし専用ウエブサイト経由しか顧客からの問い合わせを受けないという荒業に出た。当然ウエブサイトから問い合わせても返事など来るはずがない。いったいローン獲得に成功したのは誰なんだ!?という疑問が世間で加熱した。
ローンを獲得したのはやはり
2日と経たずに秘密のベールが剥がされた。Shake shackなどの大規模外食チェーンやLAレイカーズなどのプロバスケットチーム、他にも多くの大企業がこのローンを獲得していた事が判明した。中小企業救済のためのローンではあったが、大企業でも獲得できる抜け道が多くあったためだ。メガバンク各行は大企業顧客にはハンズオンで対応し、いち早くローン獲得につなげたわけだ。大企業であれば2ヶ月分の全従業員の給与額は膨大な金額となる。あっという間に$350Bがはけてしまったのはこのためであった。
大バッシングを受けローンを返却

ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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