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【米国のトレンド発信】RPAの到来 ロボティクス界のリーダー Automation Anywhere

2017年5月14日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

2016年頃から日本でも注目され始めたRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)業界。『人間に変わってデスクワークをしてくれるロポット』として米国では2011年頃から存在感を示し始め、そのロポットを提供する企業達が凌ぎを削ってきた。2017年現在、この業界のリーダー的な存在とされているのが以下の3社だ(Forrester Researchより)

  □ Automation Anywhere(アメリカ)
  □ Blue Prism(イギリス)
  □ UiPath(アメリカ)


こちらのサイト https://www.automationanywhere.com/analystreports にフォレスター社のRPA業界2017年勢力図が載っているが、これを見るとAutomation Anywhereが現在のトップランナーと言えるだろう。Big4系コンサルティングファームに勤務する私の友人もこのAutomation Anywhereを使って業務を行っていると言っていた。彼の部門は数年前までBPO(業務アウトソース)を扱っていて、主に新興国への業務アウトソースをクライアントに勧めていたが、今やもう『ヒトじゃなくてロポットを勧めろ!』というテンションでRPA一色だそうだ。

今回はこのAutomation Anywhereのウエブサイトやチュートリアル動画を見てみて、その印象を簡単にまとめてみたいと思う。
何ができるのか?

RPAソフトは一言で強引にまとめてしまうと『Windows内のものを全部動かせる“マクロ”』と言えるだろう。エクセルでマクロを使う事は多いと思うが、エクセルのマクロで他のアプリケーションを動かす事はできない。例えば『会計ソフトからデータを吐き出してエクセルでレポートを作りそれをメールで送る』という作業は一つのマクロでは完結しない。これをやってしまうのがRPAソフトだ。しかもトリガー(引き金)をセットしておくと自らマクロを起動しなくても設定した『何か』が起こると自動的にこの作業を完結してくれる。非常に便利だ。問題は『どこまで自動化できるのか?』でだろう。
『If 分岐』が直感的

エクセルを良く使う人であれば『もしこの世にif関数が無かったら、自分は会計の世界で生きていけないだろう』と思うのではないだろうか。それくらいIfで条件分岐させる事は業務効率を大きく上げてくれる。このif分岐がアプリケーションを超えて行えるとしたらどうだろうか。『もしデータをうまく落とせなかったら自分にメール送信。落とせたらエクセルで処理して別のシステムにデータをアップロード』などという事が行えてしまう。Automation Anywhereでは『ワークフローデザイナー』という機能でフローチャート的にこのif分岐の設定を行う事ができる。上述した3社の中ではAutomation Anywhereが最もプログラマティックだと言われているが、十分直感的な操作感だと感じられた。
トリガーでの連鎖

先にトリガー(引き金)を使ってタスクを起動させる事について触れたが、このトリガーはとても重要な機能となっている。例えばある業務処理をRPAソフトで完全に自動化してエクセルのデータベースを作ったとしよう。Automation Anywhereでは『◯◯&今日の日付』などファイル名で自動的に保存できる。そこで『このフォルダに今日の日付のファイルが保存されたら・・』というトリガーを設定し、別の処理を自動的に起動させる事ができる。例えば、データベースに新しい顧客があれば顧客情報をERPに追加したり、商品の価格が変わっていたらアラートとして自分や必要な人にメールを送ったりなど、様々な処理を連鎖させる事ができる。もちろん『このタイプのメールが入ったら』というトリガーを設定すれば更に別の処理を繋げる事も可能だ。うまくこの連鎖をデザインできれば自動化できる業務量が飛躍的に増えるだろう。
パターンベースのWebデータ抽出

Websiteからデータを拾って来て入力したい、またはデータベースを作りたいという場合人力だととても手間がかかる。これをRPAソフトがやってくれたらとても便利なのだが、一つ問題がある。Web上の情報はデザインやボタンの位置、情報の並び方などがどんどん更新されてしまうので、一度RPAに業務を覚えさせてもすぐにうまく動かなくなってしまうのだ。先日別のRPAソフトを使っている方から『Web情報の取り込みがなかなかうまく行かない』という話を聞いた。Automation Anywhereではボタンやデータの位置で抽出する情報を判断するのではなく『パターンベース』で判断する機能が付いている。いくつかの情報をサンプル的に覚えさせると、人と同じようにパターン認識し「あ、欲しい情報は通貨の種類と日付とその日の為替なんですね」というように認識し、そのデータを抽出する事ができる。Webデータに限らずこの『パターン認識技術』の精度向上は今後のRPAソフトの注目技術なのではないだろうか。例えば複数の部門や子会社が様々なフォーマットで作ってしまっている(又は微妙に違っている)レポートから必要なデータをパターン認識で抽出する事ができたら、これも大きく業務効率を上げる事ができるだろう。


RPAソフトはまだヒトと同じように『見て、考えて、判断して、アクションする』というところまでには達していない。だが、考える必要がないように条件分岐を設定できる事も日常業務の中にはたくさんあり、パターン認識技術により『見る』精度も向上しているとなると、その可能性は大きく拡がる。更にAIと繋げ『考える』や『学ぶ』という機能も上位バージョンには装備され始めつつあるので、今後の発達が非常に楽しみだ。弊社もこの流れに乗り遅れないように、RPAのノウハウを地道に蓄積していきたいと思う。

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