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【海外トレンド発信】ロックダウン関連M&A LululemonがMirrorを買収

2020年7月22日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

パンデミックになった当初は予定されていたM&Aのキャンセル事件が多発し話題となったが、今度はパンデミックで急成長した企業のM&Aが出てきた。特に話題となったのが、高級フィットネスウエアブランドであるLululemonがホームエクササイズブランドのMirrorを買収したM&Aだ。
伸び盛り企業がロックダウンで足踏み
Lululemonは日本ではまだ馴染みが浅いが、アメリカでは主要なショッピングモールには殆ど出店しているようなメジャーブランドだ。ヨガ愛好家達の間で人気が出たフィットネスウエアブランドで、ちょっとした短パンが1万円以上するような高級ブランドとなっている。ロックダウンにより家にいる事が多くなった人達がオシャレな家着として着るようになりオンライン販売は伸びたようだが、店舗クローズの影響が大きく今四半期は売上17%減となったようだ。
いきなり振り込まれた現金
オンライン申請を進めていくと、これは補助ではなく普通のローンで返済義務があるが、その中のアドバンスに該当する部分はどうやら本当に返済しなくて良いという事がわかった。更にこのアドバンスは従業員あたり$1,000が上限で合計でも$10,000(10人分)までしかないという事もわかった。少額ではあるが、それでも返済しなくて良い資金をもらえるのは有り難い。弊所も従業員数(アメリカ国内のみ)分の申請をしてみた。すると翌日、銀行口座にそのアドバンスの金額が中小企業庁からいきなり振り込まれていた。まだ何の審査もされていないし何かにサインをしたわけでもない。単にオンラインで申込みをしてポチッとやっただけだ。契約書すらないし今後どんな手続きしなくてはならないのかもわからない。オンラインで問い合わせても当然返事などない。仕方なく混乱が収まるまで待ってみる事にした。



Lululemon
https://shop.lululemon.com/
ロックダウンで隆盛となったホームエクササイズ
買収ターゲットとなったのは、このロックダウンで大きく売上を伸ばしたMirrorだ。下のウエブサイトを少し見るだけで、興味をそそられるようなサービスだ。



Mirror
https://www.mirror.co/



以前から話題になっていた企業であったが、このロックダウンでジムが閉まり、人々が家の中で運動をするようになり一気に契約者数が伸びたようだ。Zoomでオンラインエクササイズをするような簡単なサービスではなく、専用のミラー(鏡の中にインストラクターがライブで映し出される)を購入しプライベートレッスンを受けるという高級なものだ。機器の価格は$1,000を超える。今までは金額など気にしない富裕層が入会していたのが、ロックダウンの影響で富裕層以外の顧客も獲得してきたようだ。

Lululemonは今後単なるアパレルブランドではなく、サービスも提供するエクササイズブランドとしての成長を目指しているようで、Mirrorはジャストフィットする企業だったのだろう。多くの企業はパンデミックで業績を落としているが、それによって今後補強すべき分野も明らかになってきている。今後はその分野をM&Aによって獲得しようという動きが活発になってくる可能性がある。
翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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