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【海外トレンド発信】パンデミックに翻弄される在庫管理と資金繰り

2020年12月15日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

在庫を持つビジネス、特に海外から在庫を仕入れる企業はパンデミックの混乱によって大きく経営を揺さぶられている。在庫の少なさは欠品による機会損失に繋がるし、逆に過剰在庫はその分キャッシュを減らしてしまう。最適なバランスを保つには的確なリードタイムの予測と将来の販売予測が必須だが、パンデミックによりその両方が不確実となってしまっている。
空も海も大混乱
リードタイムに大きく影響するのがロジスティクスだが、パンデミックになって以来輸送時間のブレが激しくなってきている。例えば日本からの海便は神戸からはスケジュール通りに出港していても、ロサンゼルスの港で1ヶ月も立ち往生してしまっていたりする。パンデミックにより航空便が激減したため海便の需要が膨れ上がり、各国から港に船が押し寄せてしまい港が大渋滞してしまっているためだ。毎月在庫を海外から仕入れる企業にとって1ヶ月の遅れは欠品リスクを増大させる。それならばと思って高い料金を支払って航空便を手配すると、今度は同じような事を考える人達が航空便に押し寄せ、日本国内で飛行機に荷物を載せるまでに数週間かかってしまったりする。飛行機も船も港も刻々と状況が変わるため、どの輸送方法を選んでも適切な輸送期間を読むのは難しい。


過剰在庫と売上減のダブルパンチ
リードタイムのブレが大きいなら、欠品リスクを抑えるために厚めに在庫を持つ必要が出てくる。営業サイドが強い企業ではより在庫を厚くしようというインセンティブが生まれる。しかしながら、パンデミック下では売上のブレも大きくどれだけ出ていくかも正確に予測する事が難しい。在庫を厚めにしたタイミングで売上が下がってくれば、在庫が膨れ上がりその分キャッシュが激減する。パンデミックで資金繰りが厳しい時にこれが起こると致命的だ。
システムを無視しExcelで細かく管理
通常時ならシステムが各商品の売れ行きを予測し、リードタイムも適切に設定しておけば必要な発注時期や数量をシステムが弾き出してくれる。しかし今の状況では“過去6ヶ月の平均値”などで予測するシステムマティックな販売予測に頼る事はできない。個別に注意深く洞察し、リードタイムも適時設定値を変えながら発注時期と数量を決める必要がある。通常運転に戻るまではExcelを駆使した手作業の発注業務が続きそうだ。


翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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