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【海外トレンド発信】パンデミック下の救世主 米国版会社更生法改定

2020年6月15日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

偶然ではあるが、パンデミックの数ヶ月前に改定された会社更生法が、アメリカの中小企業の救世主になっているらしい。会社更生法(Chapter 11)というと大企業のイメージが強い。今回のパンデミックでレンタカーのHertzやデパートチェーンのJC Pennyなどの有名企業が連日のようにChapter 11の申請をしている。ところがこのところ、コロナ危機に苦しむ中小企業の間でもこのChapter 11の申請が流行っているらしい。
中小企業ではChapter 11が使いにくかった理由
まず手続きが大変で膨大な費用を要した事が中小企業にとって高いハードルとなっていた。単なる破産(Chapter 7)のように持っている資産を全て分配して終わりというものではなく、今後も事業を継続する“価値がある”という事を証明しなくてはならない。事業計画を将来のキャッシュフローに落として、こういう風に条件を緩和してくれたらちゃんと返済できるんだという資料を用意し、裁判所に認めてもらわなくてはならない。中小企業が自力でこれをやるのはなかなか難しく、仕方なく弁護士に依頼すると「この計画だと裁判所が認めないからもっとこうして・・・」「キャッシュフローの予測をもっと現実的にするには・・」などと延々と資料作りに時間を費やし弁護士へのアワリーチャージが膨らんでいくというアメリカの弁護士達が得意ないつもプレイに持ち込まれてしまう。それでも裁判所に認めてもらえれば良いが、Wall street Journalによるとその確率は27%程度であった。
オーナーシップ変更が困難
今までのChapter 11では会社のオーナーの変更が行われる事が多かった。特に大企業ではChapter 11とオーナー変更はセットの場合が多い。今までのオーナーでダメだったものがそのままで良くなるはずがないので、ターンアラウンドできるオーナーに変更するというのは債権者からすると理にかなっている。ところが、中小企業の場合はオーナー変更が難しい。まず相応しい買い手が少ない。仮に中小専門のPEファンドが叩いて買収したところで、まともな経営ができる可能性が低い。中小企業はオーナー自体がビジネスそのものである事が多いので、なかなか替えが効かないのだ。
単純でシステマティックになった新更生法
新法ではまず返済計画の提出期限が短縮された。急いで作成しなければいけなくなったが、その分弁護士のプレイに付き合って多大な弁護士費用を払う事が無くなった。更に裁判所では返済計画作成の手伝いをしてくれる専門家を紹介してくれるようになったので、フェアな料金で資料を用意する事ができる。また、裁判所への申請費用も無料化された。返済計画の審査もシステマティックになり、オーナーが変わらなくても将来の利益から分割払いで返済できる可能性が十分にあれば認められるようになり、スピーディーでシンプルなプロセスとなった。

今回のパンデミックのように外部的な要因で一時的に資金難に苦しむような企業はChapter 11で更生できる可能性が高い。シンプルになった新更生法を使えば、もう質の悪い債権者から追い立てられる事もなく安心してビジネスを継続していく事ができる。偶然にもパンデミック前に施行されたこの新会社更生法は中小企業の救世主となっているようだ。
ローンを獲得したのはやはり
2日と経たずに秘密のベールが剥がされた。Shake shackなどの大規模外食チェーンやLAレイカーズなどのプロバスケットチーム、他にも多くの大企業がこのローンを獲得していた事が判明した。中小企業救済のためのローンではあったが、大企業でも獲得できる抜け道が多くあったためだ。メガバンク各行は大企業顧客にはハンズオンで対応し、いち早くローン獲得につなげたわけだ。大企業であれば2ヶ月分の全従業員の給与額は膨大な金額となる。あっという間に$350Bがはけてしまったのはこのためであった。
大バッシングを受けローンを返却
ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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