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【海外のトレンド発信】世界の会計事情(欧米弁護士のビジネスモデルに要注意)

2017年7月17日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

M&Aや事業提携などを行う際に必ず『契約』という業務と向き合う必要が出て来る。大企業であれば法務部に任せてしまえるが、中小企業の場合はなかなかそうはいかない。管理部門のトップであるCFOが取り仕切って契約を仕上げる必要があるのだが、その際に不用意に現地の弁護士に業務を投げてしまうと大変な事態に陥ったりする。
数十ページに及ぶ難解な契約書

『なるべくシンプルな契約にしたい』という意向を伝えたとしても、そこはやはり相手もビジネス。

「こういうリスクがある」「ああいうリスクもなる」と様々な理由が付いて壮大な契約書のドラフトが出て来る事がある。文章も一つのセンテンスが10行以上に及ぶような難解な契約書様式の文章で、普通の人が読んだらうまく情報を整理できず理解できないものも多い。仕方なく「まずは先方にこのドラフトを提出して、修正希望を出してもらう」と先方に投げると、そこから泥沼の展開が進んでいく。
先方弁護士の反応

契約相手がこのドラフトを受け取っても、当然自分達では理解できないので自然と先方の弁護士にそのドラフトが渡る流れとなる。無駄に長文で難解な契約書になっていたら普通は怒ったり呆れたりしそうなものだが、それがそうでもない。

真っ向からこの長文契約書の修正点を指摘し始め、多少無理めな条文も追加したりなどして数十箇所に及ぶ変更を入れてくる。当然その変更内容が本当に必要かどうかなど、契約当事者達はわからない。

この時点で既に弁護士同士の目に見えない共同作業が始まっており、阿吽の呼吸で『修正&反論』のエンドレスなやり取りが行われる。
アワリーチャージのビジネスモデル

弁護士のサービス料金は通常アワリーチャージが基本だ。

当然ながら弁護士達はこの『チャージャブルアワー』を増やす必要があり、いつもそのプレッシャーを抱えている。そんな中で、何のツッコミどろこもないシンプルなドラフトを先方弁護士が作ってきたら『何やってるんだこの無能な弁護士は?』と思って当然だろう。

逆に長文で条件をネゴする余地が多いドラフトが出てきたら『ファインプレー!』という事になり、その後の契約書の修正合戦にできうる限り長い時間が費やされる。弁護士もビジネスなので、これを非難するわけにもいかない。
自作&定額レビュー

弁護士に業務を投げるわけにいかないとなると、ある程度ドラフトを自作し、最終段階で弁護士のレビューを(定額で)依頼するのがベストとなる。双方の契約当事者が正しく理解できるよう、できるだけシンプルな契約書にしたいところだ。

最近ではインターネット上に様々な契約のテンプレートが公開されており、それらの多くはどこかの弁護士が公開している事が多い。“Simple”という単語入れて検索し、良さそうなテンプレートを選び、当該契約用に加工しその弁護士に最終レビューを依頼するというのも良い方法の一つだ。

もちろん、全ての欧米の弁護士がこのようにアワリーチャージを稼ぐような対応をするわけではないし、とても良心的な弁護士も数多くいる。

ただ困ってしまうのは『依頼してみないとわからない』という点だ。信頼できる弁護士とのネットワークができるまでは、丸投げせずに自分で契約業務にも取り組む姿勢が大切なように思う。

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