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【海外トレンド発信】世界の会計事情 イギリス領のタックスヘイブン Guernsey島

2017年9月25日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

Guernsey島はイギリス領のチャネル諸島にある小さな独立国家で、欧米の投資家達の間ではタックスヘイブンとして多く利用されている。

先日このGuernsey島を訪問し法人設立などの業務を行う機会があった。政府筋や現地銀行、会計士や弁護士とミーティングを行い、現地事情を詳しく知ることができた。
『タックス・ヘイブンではない』という主張

Guernseyでは金融等の特定の業種を除いては法人税率が0%となり実質無税となる。しかしGuernsey政府の方とミーティングをしていた際に『Guernseyはタックスヘイブンではない』と何度か指摘された。

Guernseyは法人税率はゼロに等しいが、各国と租税条約を結び情報公開も徹底しており、OECDからもクリーンな政府と認められている。Guernseyで実体のあるビジネスをしていれば法人税は無税になるが、ペーパーカンパニーを作って租税回避のためにGuernsey法人を使うというのは難しくなっている。法規制、金融システムもイギリス流でしっかりしており、国際社会から見ても健全な国家と評価されている。
相続税も無く所得税は20%まで

島のヨットハーバーには所狭しとヨットやクルーザーが並んでおり、一見してここは『富裕層の場所』なのだと感じられた。富裕層を惹き付けるのはGuernseyの個人税制で、相続税が無いというのが大きいようだ。

また、個人の所得税は累進ではなく一律20%というのも高所得者にとっては大きい。現地実業家の方から聞いた話では、政府と個人で税額交渉を行う事が可能で、その方は『自分の年間税額はこの金額が上限』という形で政府と握っているそうだ。

このような小さな島ならではのフレキシブルなシステムも人気の秘訣かもしれない。
情報の開示がクリアすべきハードル

現地で会社を設立しビジネスを始めようとする際に最も高いハードルとなるのが情報の公開だ。

法人設立は現地政府から認可されているCorporate service providerという資格を持った設立業者に依頼をすれば数分で出来上がる。しかしその際に『最終的なオーナーは誰か?』という情報を全て提供する必要がある。

オーナーが個人であればその個人の情報。もし法人であれば法人の情報と更にその法人のオーナー(複数人の場合は全員)の情報。その法人のオーナーがまた法人であれば、更にそのオーナーの情報と何段階でも遡っていき、実質的なオーナーが一体誰なのかを完全に明らかにする必要がある。

株主が多い企業の子会社としてGuernseyに法人を作る場合はなかなか大変な作業になるだろう。
銀行も情報開示を徹底

Guernsey内の銀行はBarclaysやRBSやHSBCなどイギリスの大手銀行が主流で、口座開設時にやはりオーナーや経営陣の情報を徹底的に開示する必要がある。

この辺がOECDからも透明性が高い国と評価されている理由なのだろう。

また、経営陣にGuernseyの居住者が少なくとも一人は入らないと口座を開設してもらえないケースが多い。ファンドや信託など管理が複雑でない業種の場合は前述した現地のCorporate service providerに経営陣に入ってもらう事が可能な場合もあるので、海外オーナーがGuernseyの法人口座を持つ時の一つの選択肢となり得るだろう。

海外でジネスを行う場合、Guernseyのような場所に何らかの実体のある機能を持たせる事で税的メリットを得られる事は多い。特にヨーロッパ圏でビジネスを行う場合には一考の価値があるように思う。

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