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【海外トレンド発信】コロナ危機で大注目 M&AのMAC条項

2020年6月9日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

買収に合意していた企業がコロナ危機で大損害を被った場合、クロージング前に買収を破棄する事ができるだろうか?今月に入りこのようなM&Aキャンセル絡みの訴訟が数多く勃発し話題となっている。
Victoria’s secretの買収キャンセル
中でも話題となったのが、女性用下着ブランドとして一斉を風靡したVictoria’s secretだ。近年の不調から売却先を模索し、シカモアパートナーズが買収する事で合意されていた。ところが突然のコロナ危機によるロックダウンで不調だった売上が更に急降下。買収合意時の経営状態とはここ数ヶ月で全く変わってしまった。シカモアは当然買収をキャンセルしようという動きに出るが、Victoria’s secret側はそれは困る。訴訟でひと悶着した上、結果的には両社合意の上買収がキャンセルされた。
争点となったMAC条項
普通であれば、いくらコロナだからと言って一度合意したものをキャンセルするような事はできない。そこでシカモア側が突いてきた争点がMAC条項(Material Adverse Change)だ。重大な悪い変化が対象企業に起こってしまった場合には、クロージング前に契約をキャンセルできるという条項だ。M&Aには通常入っている条項なのだが、問題は今回のパンデミックがこのMACに相当するかどうかという点だ。
相次ぐMAC訴訟
Wall street Jounalによると、シカモア以外にも少なくとも6件以上のMAC訴訟が今月発生したらしい。MAC条項は通常はあまり争点となる事はなく、歴史的に見てもこの条項によってM&Aがキャンセルされた例は多くないらしい。しかし今回のパンデミックはあまりに影響が大きいものなのでMACと認められる可能性は高いという法曹界の意見が強い。また、完全キャンセルとは行かないまでも買収金額の値下げなどの交渉のカードとしてMACを使う価値は十分にあるらしい。今までは比較的ノーマークだったこのMAC条項だが、コロナ後のM&Aでは十分に注意してMAC条項の内容を精査する必要がありそうだ。
ローンを獲得したのはやはり
2日と経たずに秘密のベールが剥がされた。Shake shackなどの大規模外食チェーンやLAレイカーズなどのプロバスケットチーム、他にも多くの大企業がこのローンを獲得していた事が判明した。中小企業救済のためのローンではあったが、大企業でも獲得できる抜け道が多くあったためだ。メガバンク各行は大企業顧客にはハンズオンで対応し、いち早くローン獲得につなげたわけだ。大企業であれば2ヶ月分の全従業員の給与額は膨大な金額となる。あっという間に$350Bがはけてしまったのはこのためであった。
大バッシングを受けローンを返却
ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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