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ワークダイバーシティ
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勤務をしていると、現職の業務中心でなかなか他業界、異職種の情報は入り難いことと思います。
様々な職種(業務内容)や勤務スタイル、海外勤務例などを紹介してまいります。ご自身の今後のキャリア形成の参考として頂けますと幸いです。
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革新的進化をとげる企業システム~時間と量の限界を超えるITの一大革命~(下)
SAPジャパン株式会社
CFOソリューション推進室
ITコーディネータ/公認システム監査人
桜本利幸氏
~出典:経理・財務に携わる人のための使える情報誌 JBAJOURNAL Vol.6 2017 winterより~
CFOソリューション推進室
ITコーディネータ/公認システム監査人
桜本利幸氏
~出典:経理・財務に携わる人のための使える情報誌 JBAJOURNAL Vol.6 2017 winterより~
※前回の記事はコチラ→ AI(人工知能)がもたらす経営革新 ~機械学習で時間と量の限界を超える~(上)
1980年代、若者たちは事前に自分のお気に入りの曲をお気に入りの順番でカセットテープにダビングして音楽を楽しんでいた。一つのカセットに入る曲は十数曲程度。2000曲を保存するには150個ほどのカセットが必要だった。
20年後、iPodの誕生で音楽を聴く、という体験そのものが激変した。iPodの初期製品は容量3万曲。自由に複数のパターンで再生可能な上、ワンタッチで瞬時に好きな楽曲を聴くことができた。カセットテープ時代の頭出しや巻き戻しは過去のものとなった。
同様のテクノロジー主導のイノベーションが、企業システムの世界で起ころうとしている。量と時間の壁を超えるためのツール―インメモリデータベースの誕生である。
超高速で最適化されたデータベース
インメモリデータベースはそれまでのデータベースの10万倍のスピードを得た。30時間を要した処理を1秒、新幹線で2時間40分かかっていた東京~新大阪間が0・1秒で移動できることになる。まさに、世界が変わる、ITの一大革命である。AIやビッグデータの活用が急激に普及してきた背景には、こうしたテクノロジーの劇的な進展があったのだ。
ここで、インメモリデータベースについて簡単に説明しておこう。
従来のコンピュータは、CPU、メモリ、ハードディスク(HD)で構成され、HDに保存されたデータをメモリに取り出して作業を行っていた。メモリやCPUは高価すぎて、コスト的にテラバイト単位の大容量データを収容できるのはディスクだけだった。
その後、半導体技術の進歩でCPUやメモリのデータのやり取りに要する時間は桁違いに高速化したが、ディスクの高速化は頭打ちとなった。さらに高価だったメモリの価格が下がってテラバイト単位のメモリを搭載できるようになったとき、ディスクレスでメモリとCPUで動く商品が続々と登場してきた。
スマートフォンやタブレット端末にはCPUとメモリがあるだけでHDがない。ロボット掃除機のブームを巻き起こしたルンバもそうだ。ルンバにはパターン登録というAIの初歩の技術が用いられているが、掃除機の上にコンピュータを載せるわけにはいかない。小さなメモリにプログラムが書かれることで商品化が可能になった。
インメモリデータベースとは、文字通りメモリ上に作られたデータベースで、すべてのデータをメモリに素の状態で持ち、データの更新と検索/分析が一体になる。そのため、それまで基幹系システムと情報系システムが別々に存在しその間で行われていたETL(基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出して利用しやすい形に加工し、情報系システムのデータベースに書き出すこと)が不要となる。極めてシンプルでタイムラグのないリアルタイムコンピューティングの実現を目指す―それがインメモリデータベースだ。
インメモリデータベースはそれまでのデータベースの10万倍のスピードを得た。30時間を要した処理を1秒、新幹線で2時間40分かかっていた東京~新大阪間が0・1秒で移動できることになる。まさに、世界が変わる、ITの一大革命である。AIやビッグデータの活用が急激に普及してきた背景には、こうしたテクノロジーの劇的な進展があったのだ。
ここで、インメモリデータベースについて簡単に説明しておこう。
従来のコンピュータは、CPU、メモリ、ハードディスク(HD)で構成され、HDに保存されたデータをメモリに取り出して作業を行っていた。メモリやCPUは高価すぎて、コスト的にテラバイト単位の大容量データを収容できるのはディスクだけだった。
その後、半導体技術の進歩でCPUやメモリのデータのやり取りに要する時間は桁違いに高速化したが、ディスクの高速化は頭打ちとなった。さらに高価だったメモリの価格が下がってテラバイト単位のメモリを搭載できるようになったとき、ディスクレスでメモリとCPUで動く商品が続々と登場してきた。
スマートフォンやタブレット端末にはCPUとメモリがあるだけでHDがない。ロボット掃除機のブームを巻き起こしたルンバもそうだ。ルンバにはパターン登録というAIの初歩の技術が用いられているが、掃除機の上にコンピュータを載せるわけにはいかない。小さなメモリにプログラムが書かれることで商品化が可能になった。
インメモリデータベースとは、文字通りメモリ上に作られたデータベースで、すべてのデータをメモリに素の状態で持ち、データの更新と検索/分析が一体になる。そのため、それまで基幹系システムと情報系システムが別々に存在しその間で行われていたETL(基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出して利用しやすい形に加工し、情報系システムのデータベースに書き出すこと)が不要となる。極めてシンプルでタイムラグのないリアルタイムコンピューティングの実現を目指す―それがインメモリデータベースだ。
膨大なデータからヒントを見つける仕組み
例えば、3カ月後の売上を予想するとき、為替や原油価格、経済成長率、平均貯蓄率などを用いたデータ加工は必要ない。変数はすでに織り込み済みだから、素データから即、予想値を得ることができる。
企業内の不正検知(フラウドマネジメント)やリスクマネジメントでは、全件検索による探知システムにより、従来のサンプリング検索では探知不能であった部分に目が届き、発見的統制のレベルを飛躍的に高めることが可能になる。サンプリングであれば隠せるが、全件では隠しようがない。それが全件検索(ビッグデータ)の凄さである。さらに突き詰めて予防的統制につなげる機能強化も動き出している。
SAPの事例を一つ紹介しておこう。
SAPグループは監査部員63名の作業効率化により、年間1億5000万円の人件費(主に出張費)を削減している。監査対象拡大による不正被害額の削減を加味すれば、さらに大きな経済効果が見込める。
SAP監査部員の話によれば、「今までは海外拠点など現地に出向いて行っていた監査業務が、システム(SAP Fraud Management)であたりをつけてから実施できるようになって期間と工数が大幅に短縮した」と言う。データをダウンロードして伝票と付け合わせる作業がなくなり、システムで全取引をぶつける。これによって、作業時間が劇的に短縮されただけでなく、不正発生即時の検知が可能になった。加えて「すべての取引が全件チェックされている」という強い牽制が機能するようになり従業員のコンプライアンス意識の向上につながっているという。
AIや機械学習とは異なるが、システムが変わることで、経営や経理・監査の仕事が大幅に効率化される例の一つである。
膨大なデータの中には不正探知のヒントやマーケティングのヒントなど、多くのヒントが埋まっている。そのヒントをあぶりだす仕組みが、基幹系と情報系を統合したインメモリデータベースであり、その上に不正探知や機械学習のアプリケーションが載っている。そうした構図を思い描いていただけばわかりやすい。オンラインのトランザクション処理と分析系の処理を一緒にすることで経理財務の仕事は確実に変化するだろう。
例えば、3カ月後の売上を予想するとき、為替や原油価格、経済成長率、平均貯蓄率などを用いたデータ加工は必要ない。変数はすでに織り込み済みだから、素データから即、予想値を得ることができる。
企業内の不正検知(フラウドマネジメント)やリスクマネジメントでは、全件検索による探知システムにより、従来のサンプリング検索では探知不能であった部分に目が届き、発見的統制のレベルを飛躍的に高めることが可能になる。サンプリングであれば隠せるが、全件では隠しようがない。それが全件検索(ビッグデータ)の凄さである。さらに突き詰めて予防的統制につなげる機能強化も動き出している。
SAPの事例を一つ紹介しておこう。
SAPグループは監査部員63名の作業効率化により、年間1億5000万円の人件費(主に出張費)を削減している。監査対象拡大による不正被害額の削減を加味すれば、さらに大きな経済効果が見込める。
SAP監査部員の話によれば、「今までは海外拠点など現地に出向いて行っていた監査業務が、システム(SAP Fraud Management)であたりをつけてから実施できるようになって期間と工数が大幅に短縮した」と言う。データをダウンロードして伝票と付け合わせる作業がなくなり、システムで全取引をぶつける。これによって、作業時間が劇的に短縮されただけでなく、不正発生即時の検知が可能になった。加えて「すべての取引が全件チェックされている」という強い牽制が機能するようになり従業員のコンプライアンス意識の向上につながっているという。
AIや機械学習とは異なるが、システムが変わることで、経営や経理・監査の仕事が大幅に効率化される例の一つである。
膨大なデータの中には不正探知のヒントやマーケティングのヒントなど、多くのヒントが埋まっている。そのヒントをあぶりだす仕組みが、基幹系と情報系を統合したインメモリデータベースであり、その上に不正探知や機械学習のアプリケーションが載っている。そうした構図を思い描いていただけばわかりやすい。オンラインのトランザクション処理と分析系の処理を一緒にすることで経理財務の仕事は確実に変化するだろう。
よりシンプルに、より高速に。グローバル企業のシステムが変わる
インメモリデータベースはすでにSAPはもちろん、J&J、コカ・コーラ、ユニリーバ、ネスレ、ファイザーなど、グ
ローバルな商品を持っている優良企業の多くで採用されている。とくに通貨や商習慣の異なる国々を抱える欧州ではニーズが高い。日本企業も複雑さではひけをとらない。データベースを何百も抱える某企業グループでは、最初はGL情報をリアルタイムで吸い上げていく形で、会計からインメモリで一つにしようという動きもある。
こうした企業システムの進化によってビッグデータが扱えるようになり、機械学習も有効に機能するようになってきた。会計システムや人事システムなどの伝統的なオンプレミス環境のシステムと低価格のクラウド上のプラットフォームが連携することも可能だ。
機械がどれほど進化しようと、人間に求められる役割は大きくは変わらない。オペレーションは限りなく機械が担うようになるだろうが、「今まで人が行うのは大変だった部分を機械にやらせる」と考えたほうがいい。事業の要・不要を機械は判断できないし、M&Aで事業シナジーを上げようとも考えない。それを考えるのは、データを読みこなし使いこなす人間の役割であり、その役割は一層重要になるだろう。
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