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ワークダイバーシティ

会計ダイバーシティでは働き方の多様性(ワークダイバーシティ)を支援しております。
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【海外トレンド発信】加速するクラウド会計ソフトの金融サービス

2021年2月18日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

中小企業向け会計ソフト最大手のQuickbooksが銀行業を始めたという記事を先日書いたが、このソフトを提供するIntuit社は銀行業以外も色々な横展開を考えているようだ。先日このIntuit社が個人向け信用情報を提供するCredit Karmaを買収し、それにアメリカ政府が横槍を入れた事件で話題となった。



Credit Karma
https://www.creditkarma.com/
個人のクレジットスコアアプリ
Credit Karmaは個人のクレジットスコアを教えてくれるアプリとして有名だ。アメリカでは個人の信用情報がスコアという形で3桁の数字でシビアに表される。750点超えの人は『エクセレント』という区分になりいくらでもお金を貸していいという扱いになり、450点以下の人はローンはおろかクレジットカードを作ったりアパート借りる事すらままならなくなる。銀行や大家は有料でその人のクレジットスコアを確認する事ができるので、取引時には簡単に信用調査ができるという仕組みだ。スコアを上げるにはクレジットカードやローンをたくさん使って遅延なく全額支払うという事を繰り返していく事になる。その積み重ねで信用状況が良くなりスコアが上がっていくという仕組みだ。支払遅延があったりクレジットカードの残高が多く残っていたりするとどんどんスコアが下がっていき『この人はお金を払えない人ですから要注意です』というレッテルが貼られてしまう事になる。そのような訳でアメリカ人は自分のクレジットスコアが今いくつなのかを随時確認し少しでも上げようと努力することになる。Credit Karmaはスマホでいつでもスコアを確認できるアプリとして多くの人達に利用されている。
米政府から独禁法による横槍
Intuit社がCredit Karmaの買収を発表すると、暫くしてアメリカ政府から独禁法の横槍が入った。Intuit社はTurbo taxという個人用税務申告サービスを持っているが、Credit Karmaも同様の税務申告サービスを持っており、Intuitの独占を更に進めてしまうという事だったようだ。結果Credit Karmaの税務申告ビジネスのみ切り取り、これをカード決済アプリで有名なSquareに売却する事で決着が付いた。
Intuitの真の狙いはレコメンドエンジン
政府からの横槍が入ったといえ、IntuitのCredit Karmaの買収は大成功だという意見が多い。なぜならば、Intuitが欲しかったのはCredit Karmaの税務申告サービスではなく、同社が持つ金融商品をユーザーに提案するレコメンドエンジンだという見立てが多いからだ。Intuitの税務申告サービスは既にディファクトスタンダードの地位を確立しているのでCredit Karmaの小さな税務申告ビジネスは大した問題ではない。しかし同社が持つレコメンドエンジンは大きい。ユーザーのクレジットスコアに応じてローンの借り換えを勧めたり保険商品を勧めたりする機能だ。これが同社の収益源でありまさにオンラインの保険やローンの代理店ビジネスだ。Intuitがこれを取得すると税務申告サービスを利用している巨大なユーザー層に様々な金融商品を売る事ができるようになる。Intuitがまた新たな金融業界の一角に入り込んできた事になる。

IT業界の金融業への参入は今後もどんどん進みそうだ。


翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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